公益社団法人 全日本不動産協会 東京都本部
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全日 アメリカ・カナダ調査研究セミナーに参加して
支部長 林 直清
 今年1月16日から24日まで、全日本不動産関東流通センター委員11名による海外調査研究セミナーが行われ、小生も参加致しました。カナダ・アメリカにおける住宅・インターネット・不動産流通システム・不動産証券化事業等の視察であった。東京都本部からは企画システム委員長であり副本部長の金子重雄氏と小生が参加しました。バンクーバー・シアトル・サンフランシスコ・ロサンジェルスと過密なスケジュールで一日の平均睡眠6時間位という大変ハードな視察であった。
 カナダ・バンクーバーでは2×4分譲住宅・コンドミニアム・タウンハウス・高級分譲地・オープンハウス等の視察をすることが出来ましたが、バンクーバーでのレポートは全日東京に掲載しますので割愛させていただきます。
セミナー風景 1月18日にシアトル郊外にあるノースウエスト・マルティプルリスティングサービスという不動産協会を訪問した。この協会は会員仲介業者によって所有され、創立が1984年で、西ワシントン地域の不動産業者に広範なサービスを提供しており、中でもインターネットを介して物件の登録と情報公開を大仕掛けに行っていた。1081社の仲介業者(ブローカー)と14502名のエージェントが会員になっている。敷地はゆうに1000坪はあるかと思うほど広く、木立の中にあって、周囲には数10台駐車できる広いスペースを備えていた。社屋は平屋建てではあるが、いくつものブースに区切られたオフィス・応接室・広いセミナールーム・パソコン研修室・役員室・印刷工場・広いサーバールーム、それに会員向けの様々な販売ツールや書籍・契約書を売っている売店等を備えていた。一人一台以上のパソコンを稼動し、図面の作成・登録・検索等、最先端の技術を利用して仕事をしている姿を見学して、日本より数年進んでいる感じがした。特に物件の写真はバーチャルな立体画像とボイスによる紹介が特に印象的であった。セミナールームで会長はじめ幹部の皆さんから熱心にインターネットとアメリカの不動産情報公開のセミナーを受け、昼食もご馳走になった。帰りには全員にシアトルマリナーズの帽子をお土産にいただき感激を致しました。
ジョン・L・スコット社 社長レノン・スコット氏 そしてブローカー(仲介業者)で全米ランキング10位以内に位置付けられているジョン・L・スコット不動産会社社長のレノン・スコット氏から不動産取引の状況、インターネットの活用、社員教育、将来の展望等を聞くことが出来た。ジョンスコット不動産は75年の歴史を持ち、社長は3代目とのことで、経済学博士であり、斬新的な考え方を持って活躍しておられ、多数のエージェントから高い信望を得ていると同時に社会的に高い評価・地位を得ているようであった。ジョンスコット社はワシントン州、オレゴン州、アイダホ州、モンタナ州で90の支店を持ち2500名のエージェントが働いているとのことであった。そして、昨年は34000件の売買取引と60億ドルの契約高を記録したとのことである。
ジョン・L・スコット社受付  社長の案内で近くにある支店を見学したが、看板が一つあるのみで玄関を入るとカウンターに若い受付嬢がいて、オフィス内を親切に案内していただいた。応接間・会議室が数室あり、オフィス内は1坪から3坪程のブースや部屋で区切られており、10数名のエージェントが仕事をしていた。エージェントは部屋を使用できるが、夫々契約料が違うようで業績のよいエージェントはそれだけ広い部屋を利用していた。使用料は仲介手数料の中から支払うとのことである。まるで一昨年シカゴで視察した法律事務所のようで、大変に環境整備が行き届いており社内はゆったりと広く又明るくきれいであった。そして社員のマナーもよく社員教育が徹底しているように思えた。セールスパーソンというエージェントは年のころ35〜55歳位の人々が多く、中でも女性の姿が70%以上と多く目についた。各部屋にはパソコンが備わっており、パソコンが手足のごとく日常、使われていた。パソコン教育の重要性を強く感じた一日であった。
視察団 キャシン・カンパニー前にて 1月19日にはカリフォルニア州サンフランシスコペニンシュラ地域にあるキャシン・カンパニーという不動産会社を視察し、不動産流通システムを勉強することが出来た。エージェントである日系人のレン氏の案内でオフィス内をくまなく見学し、不動産取引の実状等をお聞きした。キャシン社は、200名のエージェントを抱え、中でも90%が女性であり、トップセールスも当然女性とのことであった。またドイツ語・フランス語・中国語・スペイン語・日本語等色々な国の言葉を話せるエージェントが働いているとのことである。ブローカーはエージェントにオフィスを提供し、新聞広告等の宣伝を行っており、ブローカーとエージェントは仲介料3%を50:50でわけるとのことである。不動産取引の手数料は通常6%で、セールスエージェント3%・バイヤーズエージェント3%ずつで分配されている。この地域の特徴は、シリコンバレーのインターネット関連等のハイテク企業に勤めている若い億万長者が多く輩出しており、彼らが住宅を購入している関係で、価格が高騰しているとのことであった。
レン氏のインターネット ホームページの説明 また午後からはアメリカの登記制度視察の為にファースト・アメリカン・タイトル・カンパニーをレン氏の紹介で訪問し、シャロン女史より説明を受け、仕組みなどを質疑応答した。タイトル・インシュアランス業務とエスクロー業務をかねる会社が多いそうで、タイトルカンパニーの主な業務は、売買取引物件に先取特権・留置権・抵当権がついていないことを調査し、そのリスクを保証することであり、買主の利益を擁護することであるとのこと…。エスクロー会社の業務は契約をし、クロージング、登記するまで、手付金・権利証等を保管する業務を行っているとのことである。エスクローオフィサーは売主・買主に対し、中立的立場で仕事を行なわなければならないとのこと…。タイトルカンパニーによる所有権の調査が完了すると、譲渡証書が作成され、公証人によって認証され、登記されるとのこと…。尚、年のころは40歳前後のシャロン女史はエスクローオフィサーと公証人の資格を持っているとのことであり、大変に有能な方とお見受けした。
RE・インフォリンク社サーバールーム 1月20日には、R.E.インフォリンク社を訪問した。インフォリンク社は東日本不動産流通機構のような組織(会社)で、11500名の会員が加盟しており、その業務は不動産情報を入手し、資料を作成するための最新技術の提供やセミナーの開催、パソコン教育、技術的なサポートやホームページの作成等多岐にわたっていた。尚、40名で全ての仕事を行っているとのことであった。90%が女性職員であり、中には70歳にならんとするご婦人もいて、驚かされた。尚、職場では家族やペットの写真をデスクの周りに飾ってあり、アットホームな雰囲気であった。ここでもパソコンやセミナールームがあり、10名程の女性―主に主婦らしき人達がパソコンのセミナーを熱心に受講していた。
RE・インフォリンク社セミナールーム  インフォリンク社が提供しているシステムは、会員向けのMLSシステム「ホーム・ワークス」とエンドユーザーにインターネットで物件情報を公開するシステム「サイト」の二つがあるとのことであった。「ホーム・ワークス」には、地図と連携したソフトがあり、検索した物件が自動的に地図上にプロットされ、また逆に地図から範囲を指定して物件の検索が可能であった。そして、地図上には公園や公共施設などの建物が表示されており、顧客に対して近隣情報をサービスできるようになっていた。その他に検索した物件情報をそのまま顧客にEメールで送信できる機能やダウンロードした物件情報を基にして市場分析レポートやローン計算等、営業に必要な様々なツールを作成できるソフトも用意されていた。
RE・インフォリンク社前にて  エンドユーザー向けサイトは会員と同じ物件データ-ベースを基にしてインターネットでエンドユーザーが直接検索できるサイトである。一般的な物件検索やオープンハウス、オフィスの検索が出来るほか、エージェントの検索機能もついており、地域やエージェントの名前から検索し一覧リストが表示された後、メールの送信やエージェントのプロフィールのページにリンクできるようになっている。尚、このサイトのヒット数は月間1500万であり、1ヶ月には約50万人が利用しているとのことであった。バンクーバーでもシアトルでもサンフランシスコでも感じたことは、住宅・不動産のエージェント、インターネット会社いずれをとっても男性労働者は少なく圧倒的に女性労働者で占められている。特に主婦パワーの活躍を見せつけられて、我が国でも近い将来、こうなるであろうと予感した次第です。21世紀のIT革命時代の不動産業界にとって、女性がこの分野に進出することにより、益々女性上位社会が出現するものと思わざるを得ません。
I.C.C.M.I.C社長マーク・カールラン氏のセミナー 1月21日にはロサンゼルス郊外にあるインペリアル・クレディット・コマーシャル・モゲージ・インベスメント・コーポレーション(I.C.C.M.I.C)という長い名前の不動産証券化事業を行っているリート(REIT)会社を訪問しました。REITの急成長は、92年以降のアメリカ経済の回復を背景に不動産価格が底入れ、反転したことに伴っておきたことだといわれています。REITの数は全米で約220社の組織があり、内27社が株式市場に上場しているとのことです。50%が法人、50%が個人組織だそうです。このICCMICもナスダック市場に上場しており、1997年7月31日メリーランド州法人として設立したとのことでした。そして、ローンに対する投資と不動産に対する投資を行っており、社長、副社長、専務と面談しましたが、3人とも弁護士であり、全員30歳台であった。中でも社長のマーク.カールラン氏はハーバード大学出身の大変有能な経営者と見受けた。彼は、39歳でJMB Realty Corpに7年間上級副社長として勤務し、100以上のショッピングセンター、オフィスビル、アパートメント、ホテルを取得したとのことです。ICCMIC社では、経営者や従業員のサラリーやボーナスやランニングコスト等を除いた利益の100%を配当にまわして法人税は支払っていないとのことです。又、REITの配当利回りは220社平均で9%ですが、CMIC社は11%と高く配当していますとのことでした。決算書によると1999年9月30日現在の総資産から総負債を引いた株主ネット資産は402億円だそうです。大変に驚いたことは、日本の株主に対する報告書とは違って、150Pにも及ぶ分厚いもので、特にリスクファクターの記載が細かく記載されていることです。さすが情報公開の先進国、アメリカだけあって、良い点も悪い点も不利な点も堂々と記載されているのには感心させられました。例えば、抵当ローン(モゲージローン)に対する投資が返済金利の変動や不良債権化によって減額されること等が詳細にふれられています。株主報告書は法律的見地に立って、ありとあらゆる角度より検討をし、何と50回位下書きをしたと社長自ら話してくれました。私が「デューデリジェンス」のことを質問致しましたところ、投資家に対するデューデリジェンスは不要であるが、自ら物件を購入する場合には会計士・鑑定士・建築士・弁護士・不動産業者等ありとあらゆる角度より調査し、判定し、購入を決定しているとのことであった。
 最後になりましたが、バンクーバーでの2日間の現地視察はマクドナルド・リアルターのエージェントである日本人三好眞理子女史の用意周到なる準備とお力添えによって実現できたこと、又、自ら2日間にわたって同行し、様々な質問にもいやな顔一つせずにこやかに応対していただいたことに感謝しお礼を申し上げます。又、サンフランシスコでもキャシン社のレン氏にもひとかたならぬお力添えをいただいたこと厚くお礼申し上げます。
 全日本不動産協会関東流通センターにとって初めての海外調査セミナーでありましたが、事故もなく一定の成果を得て成功裡に終了したことは、諏訪恒雄団長(千葉県本部長)はじめ、椎野昌宏副団長(研修広報委員長)、金子重雄副団長、団員の藪根憲四郎氏、梶和裕氏、森幸一氏、木剛俊氏、前田堅治氏、事務局長の高橋宣康氏、次長の清水昭雄氏、特別参加のアットホーム部長の宇治野孝一氏、添乗員として参加していただいたティ.シィ.アイ.ジャパン社長の早崎寛氏のご協力と熱意によるところであると厚くお礼申し上げる次第です。尚、近日中に視察報告書を関東流通センター会員1万社の皆様にお届けすることになりますので、ご期待ください。
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